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山口地方裁判所 昭和51年(わ)32号 判決

本籍

愛媛県松山市木屋町一丁目四番一〇号

住居

山口県岩国市麻里布町一丁目五番二五号

金融業

越智勇

大正一四年九月一七日生

右の者に対する所得税法違反被告事件につき、当裁判所は、検察官堀山美智雄出席のうえ審理を終え、次のとおり判決する。

主文

被告人を懲役四月及び罰金二五〇万円に処する。

右罰金を完納することができないときは、金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。

本裁判確定の日から二年間右懲役刑の執行を猶予する。

訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人は

第一、山口県岩国市麻里布町一丁目五番二五号に事務所を置き、貸金業を営んでいるものであるが、昭和四七年一月一日から同年一二月三一日までの課税総所得金額は二、二七五万二、〇〇〇円で、これに対する所得税額は一、〇二一万八、四〇〇円であつたのに、貸金の利息収入、手数料収入を公表帳簿から除外し、偽名の預金を設定するなどの不正手段により、その所得を秘匿したうえ、昭和四八年三月一五日同市同町六丁目一四番二五号岩国税務署において、同税務署長に対し、所得金額がない旨の虚偽の所得税確定申告書及び損失申告書を提出し、もつて不正の行為により、昭和四七年度の所得税額一、〇二一万八、四〇〇円を免れるとともに昭和四八年三月三〇日同市同町二丁目六番八号岩国郵便局において、昭和四七年度の源泉徴収税額七万四、八〇〇円の還付を受け、

第二、前記事務所において引き続き貸金業を営んでいるものであるところ、昭和四八年一月一日から同年一二月三一日までの課税総所得金額は二、一七四万三、〇〇〇円で、これに対する所得税額は九四〇万九、三〇〇円であるのに、貸金の利息収入、手数料収入を公表帳簿から除外し、偽名の預金を設定するなどの不正手段により、その所得を秘匿したうえ、昭和四九年三月一五日前記岩国税務署において、同税務署長に対し、所得金額がない旨の虚偽の所得税確定申告書及び損失申告書を提出し、もつて不正の行為により、昭和四八年度の所得税額九四〇万九、三〇〇円を免れるとともに昭和四九年四月五日前記岩国郵便局において、昭和四八年度の源泉徴収税額三〇万五、〇〇〇円の還付を受けた

ものである。

(証拠の標目)

判示の全事実につき

一、被告人の

(1)  当公判廷における供述

(2)  検察官に対する供述調書(三通)

(3)  大蔵事務官への供述を録取した質問てん末書(七通)

一、証人荒川数義、同広保千秋、同林正治の当公判廷における各供述

一、証人塚田精一に対する当裁判所の尋問調書

一、国光綾子、中野厚、広保千秋、塚田精一の検察官に対する各供述調書

一、杉原護、林正治、国光綾子、田丁マサ子(四通)、金崎智子(二通)、佐々木康子、中島博、走内隆夫、弘中昇、広保千秋の大蔵事務官への供述を録取した各質問てん末書

一、大蔵事務官作成の「調査事績報告書」と題する書面(九通)

一、検察事務官作成の「預り手形明細No.1ないしNo.4」及び「貸付金台帳No.1、No.2」と題する各書面の謄本一綴

一、岩国税務署長作成の「青色申告の承認の取消し決議書」及び「所得税の青色申告の承認取消し通知書」と題する各書面(いずれも写)

一、坂本直規、稲益米男、中川岩男、日山政義作成の各「証明書」と題する書面

一、佐々木忠夫作成の「普通預金元帳」及び「元帳」と題する各書面の写

一、日山政義作成の「普通預金元帳」と題する書面の写

一、西崎義一作成の「答申書」と題する書面

一、押収してある出入帳二冊(昭和五一年押第四〇号の1、同号の9)、貸付台帳一冊(同号の2)、済分貸付金台帳四冊(同号の3ないし6)、印鑑証明台帳(同号の7)、領収書綴一綴(同号の8)、林借入明細完済分帳一綴(同号10)、杉原完済分帳一綴(同号の11)、借入金支払済分帳一綴(同号の12)、所得税の損失申告書一綴(同号の13)、青色申告者書類綴一綴(同号の14)、普通預金元帳一一冊(同号の15のの1ないし15の11)、法人税決議書一綴(同号の16)、訴状写六通(同号の17ないし22)

(法令の適用)

被告人の判示各所為は、いずれも昭和五二年法律第一四号「所得税法の一部を改正する法律」附則二条による改正前の所得税法二三八条一項(一二〇条一項三号)に該当するところ、それぞれ所定の懲役刑と罰金刑を併科することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、懲役刑につき同法四七条本文、一〇条により犯情の重いと認める判示第一の罪の刑に法定の加重をなし、罰金刑につき同法四八条二項により各罪所定の罰金額を合算し、その刑期及び金額の範囲内で、被告人を懲役四月及び罰金二五〇万円に処し、右罰金を完納することができないときは同法一八条により金一万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとし、情状により同法二五条一項を適用してこの裁判の確定した日から二年間右懲役刑の執行を猶予し、訴訟費用は刑事訴訟法一八一条一項本文により全部これを被告人に負担させることとする。

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判官 中村行雄)

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